浴室乾燥・換気扇の故障?その14
メーカーより2月中旬までに回答して貰うようにマンション施工(管理)会社の担当者に依頼したところ、『今月(1月)中に回答するように求めますので、回答があり次第、ご報告させていただきます。』とメールで返信が来たのだが、2月中旬になっても何も連絡が無い・・・
施工(管理)会社の担当者に催促メールをすると、よくやく返答が来た。
ちなみに回答書の日付が1カ月前になっていて、担当者からのメールには『日付が1か月前になっており、間違いかと思い確認致しましたが、送付先が分からずにそのままになってしまっていたそうです。』
送付先が分からずにそのまま放置?
このメーカーの非常識な対応には慣れてきたが、相変わらず残念な会社だ。
以下、メーカーからの回答
1.ご依頼のデーター提供について
修理の統計データー並びに設計上のデーター等につきましては、大変申し訳ございませんが、公開致しかねます。何卒ご賢察のうえご了承賜りますようお願いいたします。
2.設計寿命について
浴室暖房乾燥機は、平成21年施工の消費生活用製品安全法の長期使用製品安全点検精度で特定保守製品として設計上の標準使用期間の表示が義務付けられました。弊社の浴室暖房乾燥機は標準使用期間を10年としてご案内をしております。納入した製品は、法の施行前ですが、基本的に考え方は同じです。設計標準使用期間はJISで定められた標準使用条件の下で使用した場合に経年劣化により安全上支障なく使用することができるとして設定されたものです。尚、設計標準仕様期間は製品の故障や機能低下の無料修理等を行う無償保証期間とは異なります。
3.ファンの品質改善について
ファン割れの類似ケースで過去に数件、外部分析機関で調査したことがありますが、いずれも破断面は起点からきれいな波面を呈していることから科学的に侵食されており、ソルベントクラックと判断されています。ソルベントクラックとは、薬品や油脂の溶解成分が樹脂の成型歪や外部応力等がかかっている部分の分子鎖に侵入し亀裂を発生させる現象です。また、上記のファン付着物の赤外分光分析を行った結果、付着物の主要成分はエステル化合物(動植物油等)と判断されました。
近年、御家庭で使用されるケミカル商品は多様化しており、樹脂へ悪影響を及ぼすリスクが高くなっております。弊社、同浴室暖房換気乾燥機の使用実績ににおいて、今回のようなファン割れの多発傾向は無いことから、同製品使用にて必ずしも同様の不具合が発生するとは考えておりませんが、今後も起こり得る様々な環境の変化を踏まえ、耐薬品性が高い樹脂材料への変更を2012年12月生産より実施しております。
引用、終わり。
まず、『1.ご依頼のデーター提供について』で『公開致しかねます。何卒ご賢察のうえご了承賜りますよう』と書かれている。
『ご賢察』して下さいと言われたので勝手に推定させて貰うが、公開できないのは統計も取っていないし強度計算もしていないからだろう。
『2.設計寿命について』については10年という予想通りの回答。だったら1年とか5年あまりで立て続けに破損する部品は何らかの不具合があると考えるのが当然。
『3.ファンの品質改善について』で長々とソルベントクラックについて説明しているが、これは遠回しに私の使い方が悪いと言いたいのだろう。
例によって突っ込み処が色々ある回答だが、今回はソルベントクラックについて検証してみたい。
まず、今回破損したファンの材質だが分解した時にABSの刻印を確認している。
ABSが植物油に弱いのは周知の事実、上記回答の内容とも一致するので材料はABSで間違い無いだろう。
問題は何でABS樹脂を24時間換気システムを兼ねた浴室換気扇に使っているかと言う事だろう。
そもそも、何で24時間換気システムを法令で義務化したかと言えば、シックハウス対策の為。
参考リンク:
新築建材に含まれる、人体に有害な物質を室外に排気する為のシステムです。
厚生労働省による濃度指針値のある物質(上記リンク先より抜粋)
- ホルムアルデヒド
- アセトアルデヒド
- トルエン
- キシレン
- エチルベンゼン
- スチレン
- パラジクロロベンゼン
- クロルピリホス
- テトラデカン
- フタル酸ジ-n-ブチル
- フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
- ダイアジノン
- フェノブカルブ
続いて、ABS樹脂でソルベントクラックを引き起こす物質を調べてみます。
華陽物産株式会社という会社のHPが詳しいかな?
- ホルムアルデヒド〇 若干の影響はあるが、条件により十分使える
- アセトアルデヒド△ なるべく使わない方が良い
- トルエン × 烈しい影響があるため、使用に適さない
- キシレン × 烈しい影響があるため、使用に適さない
- エチルベンゼン × 烈しい影響があるため、使用に適さない
- スチレン △ なるべく使わない方が良い
- パラジクロロベンゼン 不明
- クロルピリホス 不明
- テトラデカン 不明
- フタル酸ジ-n-ブチル 不明
- フタル酸ジ-2-エチルヘキシル 不明
- ダイアジノン 不明
- フェノブカルブ 不明
これを見る限り、24時間換気システムの強度部材にABS樹脂を選択している事自体が設計ミスと思えるのだが。
ちなみに手近の製品で家庭用製品の樹脂製ファンを幾つか調べてみたが、ABSを使っている製品は見つからなかった。
ABSは比較的ソルベントクラックに弱い樹脂なので、強度部品への使用は避けるのが一般的なのではないかと思う。
それに、もしもソルベントクラックが原因だとすれば、何らかの薬品や油脂が付着するのが前提なので、ファンの場合は汚れが付着するブレードの内側周辺で応力の掛かる部分が壊れるはず。
今回クラックが発生したリング部分は殆ど汚れが付いていないので原因は別にあると考えるのが普通だろう。
ソルベントクラックが原因では無いと考えられる根拠はもう一つあって、上記回答書でも触れていますがソルベントクラックで割れた場合は断面が鏡のように滑らかで光沢があります。
一方、問題の部品の断面は黒い樹脂が白っぽく見える・・・繰り返し応力で破断すると細かなスケール状の傷ができるので白化します。
単純に強度不足が原因と思う。
次回に続きます。