巧言乱徳

こうげんらんとく

タバコで死ぬと言う事

父親の一周忌が終わった。

 

最後に入院する日の朝、自宅から病院に出掛ける直前に

 

「頼む、タバコを吸わせてくれ・・・」

 

チャイルドロック付きの100円ライターを、自力ではボタンが押せない程体力が無くなっていた。

 

入院時の担当医からの説明は「末期の肺癌、余命3カ月」。

 

しかし、入院してから丁度1カ月で死亡。

 

1カ月で死ねて良かった、おそらく父は冥途でそう思っているだろう。

 

そばで見ているのが耐えられない位の酷い苦しみ方だった。

 

肺癌に痛み止めが効かないなんて知らなかった。

 

患部が痛いのでは無く、呼吸が出来ない事がひたすらに苦しいのだ。

 

日々、少しづつ肺が機能しなくなる。

 

荒い呼吸を繰り返しても酸素が取り込めなくなる。

 

ドラマや映画の拷問シーンを思い出して欲しい。

 

頭から布の袋を被せたり、タオルで顔面を覆って水を掛ける拷問を見た事がありませんか?

 

単純に、殴る、蹴るだけでは口を割らない筋金入りのテロリストでも耐えられない苦痛が24時間、休み無く、数カ月も続く。

 

眠ることも出来ず、苦しみ、もがきながら死んで行くのだ。

 

私は勿論、喫煙者である父親自身もタバコで死ぬと言う事がどういう事か、全く判っていなかった。

 

死亡する前の数日間、鼻から酸素吸入を受けていたが自分で何度も外してしまっていた。

 

肺が機能していない為に既に会話をする事も出来なかったが、あれはもう、楽にしてくれと言う事だったのだろう。

 

看護師にせめて眠れるように睡眠剤を処方して貰えないか頼んだが、薬剤を投与するとそのまま呼吸が止まって死んでしまうと言われて拒否された。

 

病院で安楽死はさせて貰えない。

 

死ぬ直前、徹夜でベッドサイドに付き添った。

 

目に見えない死神が、父親の上に覆い被さって鼻と口を塞いでいるのを体で感じた。

 

息を引き取った父親の顔がようやく穏やかになったのを見て、涙が止まらなかった。 

 

改めて病院で貰った死亡診断書を見直す。

 

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死亡の原因として

(ア)直接死因 肺炎

(イ)(ア)の原因 肺癌

(ウ)(イ)の原因 不詳

(エ)(ウ)の原因 空欄

 

あれだけのヘビースモーカーが肺癌で死んだのに、原因は「不詳」になっている。

 

統計的に算出されているタバコが原因の死亡者数は、一体どのように算出されているのだろうか?

 

受動喫煙を含めて、毎年何人がタバコが原因で悶え苦しみながら死んで行っているのだろうか?

 

私が子供の時には未だ、受動喫煙なんて言葉がなかった。

 

私自身、自宅室内、車の中、至る所で父親の副流煙により発癌物質を多量に吸い込んでいる。

 

いずれ私も、父親の様に苦しみにのたうち回って死んで行くのかも知れない。

 

これから数回、タバコについて書かせて頂きたいと思います。