巧言乱徳

こうげんらんとく

入院飯10

相変わらず不自然なうつ伏せ姿勢で寝るのに慣れず、夜中に数回目覚めて身体をストレッチ。

熟睡出来ないまま、明け方ウトウト微睡んていると、何だか音が聞こえる。

薄っすらと目を開けると、周囲が明るい。

夜が明けたのか?

それにしても、この音は何だ?

『静かにして貰えませんか!』

アメーバ氏の声で覚醒した。

独り言のベッドの天井照明が付いている。

時計を見ると、まだ夜明けまで1時間も有る。

引き出しや扉の開閉音、衣類をビニール袋から出し入れする様なガサガサする音。

何でこんな時間に荷物の整理をしているんだ?

アメーバ氏は昨夜は特に具合が悪かったようで、夜中にも痛み止めを処方されていた。

日中の独り言だけでもイライラしていたはずなので、流石に我慢の限界だったのだろう。

しかし、先般の携帯電話や補聴器も同様だが、この様な問題行動を起こす人はそもそも自分の行為が他人に迷惑をかけているという自覚が無い。

従って注意されても何故注意されるのか理解が出来ない。

結局、この患者は注意された後も暫くの間ガサガサを止めなかった。

アメーバ氏が切れるかと思ったが、これ以上言っても無駄だと思ったのだろう。

最後の朝食。

f:id:kougenrantoku:20170925164105j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925164119j:plain

am10:00退院。

2日間の差額ベッド代と手術費込みで費用は約27万円だった。

眼球内のガスが抜けるまでは手首に薄いグリーンのバンドが巻かれる。

f:id:kougenrantoku:20170925164201j:plain

万一ガスが残った状態で交通事故などで意識不明のまま他の医療施設に緊急搬送された場合、笑気ガスなど使われると失明の恐れがあるので、その予防策との事。

タクシーで自宅へ戻る。

自宅へ帰っても、更に1週間うつ伏せ姿勢を続けなければならないが、これ以上他の患者に煩わさる事が無いだけでも心が休まる。

最初に医師から入院を告げられた時には久々にゆっくり休めると思ったのだが、とんでも無い入院初体験だった。

ちなみに入院前と比較して体重は3㎏減っていた。

広告を非表示にする

入院飯9

am6:00起床。

いよいよ明日は退院。

朝食。

f:id:kougenrantoku:20170925162838j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925162851j:plain

昨日入院した、窓際のベッドの患者に見舞客が来た。

どうも生花を持って来た様だが、看護師さんから注意を受けている。

見舞にはフルーツ盛合せと共に定番商品だと思っていたが、花粉症などの問題が有るのでNGらしい。

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170925162926j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925162940j:plain

昨日入院した2名共に手術から帰って来たが、両者共に片目だけの白内障手術だった様だ。

昨日から独り言を繰り返している患者は、手術直後にも関わらずテレビで大相撲中継に夢中になっている。

午後3時頃から6時まで、立ち会いを見ながら『惜しいっ!』『今のは仕方がないよな』『アアッ!』と、頻繁に大きな声で話し続けている。

当然、他の入院患者も聞こえているはずなので、誰か注意をするかと思ったが、私と同様でトラブルになるのが嫌なのだろう、全員静観している。

この患者は独り言以外でも行動がガサツで、扉の開閉や足音等も他の患者への配慮が全く感じられない。

見舞に生花の患者がベッドに居るか居ないか判らない位静かなのとは対照的だ。

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170925163050j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925163102j:plain

その後、消灯まで独り言は続いた。

明日の退院が待ち遠しい。

広告を非表示にする

入院飯8

am6:00、起床。

この病院は週の始めに手術が集中する。

眼科の手術の多くは白内障などの比較的入院日数が少ない患者が多い為、週の後半には大抵の患者が退院してしまうので週末は入院患者が少ないようだ。

私のベッドの有る4人部屋は、例の携帯電話と補聴器が退院してから新規の入院は無く、昨夜はアメーバ氏が一時的な外出許可を取って帰宅したので一人きりの静かな夜を過ごした。

朝食。

f:id:kougenrantoku:20170925083219j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925083236j:plain

朝食後の点眼時、手術した右目を鏡で観察する。

手術直後には白目部分が真っ赤に充血していてターミネーターの様になっていたが、大分赤い部分が減ってきた。

眼球内に充填されたガスも徐々に減ってきて、顔を上げて水平方向に視線を向けると、視界上部にガスが溜まっているのが線になって見える。

実際には眼球内部で視界が反転するので、線から下の部分が全部ガスなのだ。

ガスは通常の体液と屈折率が異なるので、明るさは感じられるが曇りガラスを通している様に、視界がハッキリしない。

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170925083318j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925083349j:plain

午後になってから、週明けに手術を受ける為に空いていたベッドに2名の新しい患者がやって来た。

両名共に比較的症状は軽いらしく、テレビを見ている。

窓際のベッドの患者はとても静かなのだが、アメーバ氏の隣の入り口近くの患者が問題行動を取り始める!

最初は私に話しかけているのかと思ったが、周囲がビックリするような大声で独り言を繰り返すのだ。

じれは、認知症じゃなかろうか・・・トラブルは避けたいので注意もできない。

何でこの部屋はこんな患者ばかり入って来るんだ?

まあ、明後日退院なのでそれまでの辛抱だ。

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170925083443j:plain

f:id:kougenrantoku:20170925083335j:plain

一時帰宅していたアメーバー氏も戻り、満室となった4人部屋。

隣のベッドの不気味な独り言を聞きながら夜が更ける。

広告を非表示にする

入院飯7

am6:00起床。

相変わらずうつ伏せ姿勢に苦戦していて安眠出来ない。

病院からはV字マクラと言うのが追加支給された。

円柱状のクッション2個を平行に並べて端部をくっ付けた形状で、通常はくっ付いた部分を顎の下に当てて、円柱部は左右の脇の下に抱く様にして寝転ぶ事で胸の圧迫を減少させるのだが、使い方が悪いのか体型に合っていないのか、全く楽にならない。

一番辛いのは首だが、額と、顎から口にかけての長時間のクッションとの接触が、地味に痛い。

私の場合、剥離したのは網膜の右下だが、中央上側もレーザーを当てられている為に、患部全体に均等にガスを当てる為に医師からは地球の中心を覗き込む様に真下を向く様に指示されている。

今迄の人生、地球の中心を覗き込むなんて経験は無い。

指示を守る為にはかなり顎を引いて横になる必要が有るので、クッションに接する額や顎、口周りに体重が集中するのだ。

人間の頭から喉にかけての中心部には重大なツボが集中している。

例えば、ジャンプコミックス北斗の拳の2巻で、ケンシロウがGOLANのカーネル(大佐)と戦うシーン。

f:id:kougenrantoku:20170924101442j:plain

北斗神拳奥義に北斗壊骨拳(ほくとかいこつけん)というのがあるが、これは世紀末の核戦争を生き延びた強靭な肉体を持つ軍の特殊部隊員ですら、眉間を指で突かれるだけで全身の骨格が背中側から飛び出るという恐ろしい技だ。

長時間秘孔を圧迫続けるのが、いかに危険かお判り頂ける事と思う。

又、通常仰向けで寝ている場合は自然に喉の奥に飲み込まれる唾液が、重力で唇の裏に溜まる。

従って、定期的に唾液を飲み込まなければならないが、かなりの量が涎となって落下するのも不快で有る。

朝食。

f:id:kougenrantoku:20170924093251j:plain

f:id:kougenrantoku:20170924093307j:plain

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170924093321j:plain

f:id:kougenrantoku:20170924093341j:plain

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170924093355j:plain

食事以外は1日4回の点眼とシャワー。

後はうつ伏せ姿勢を取り続けるだけの生活はまだ半分も過ぎていない。

広告を非表示にする

入院飯6

am6:00起床。

朝食。

f:id:kougenrantoku:20170924092224j:plain

f:id:kougenrantoku:20170924092257j:plain

入院の友。

f:id:kougenrantoku:20170924092329j:plain

朝食後、看護師さんが体温と血圧測定に来た時に、頭を洗いたいならシャワーのお手伝いをしますが如何ですかと尋ねられた。

手術翌日から首下のシャワーが許されているのだが、頭が洗えないのでこれは嬉しい申し出である。

しかし、どの様に手伝ってくれるのであろうか?

狭いシャワールームに2名で入るのか?

若くて可愛らしいこの看護婦さんと一緒にシャワーを浴びるのか?

前はタオルで隠すとして、看護婦さんは水着になるのか?

一瞬、色々な妄想が頭をよぎったが、詳しく聞いて見るとシャワールームでは無く、洗髪室と言うのが有ると判明。

美容院の様な椅子に仰向けに仰け反って座り、頭を洗って貰うのだ。

当然、服は着たままだ。

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170924092418j:plain

f:id:kougenrantoku:20170924092439j:plain

昼食後、机に頭を付けて下を向いていると件の看護師さんがやって来て、洗髪室へ。

プロの美容師では無いが、丁寧に洗って貰い、さっぱりした。

有料でも良いから毎日洗って貰いたいものだが、スタッフの人手が足りないのであろう。

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170924092506j:plain

f:id:kougenrantoku:20170924092520j:plain

携帯電話と補聴器が退院してアメーバ氏と2名になった4名部屋は静けさを取り戻した。

まあ、静かになったからと言って安眠できる訳では無いのだが。

広告を非表示にする

入院飯5

又も眠れない夜が明けた。

am6:00朝食。

f:id:kougenrantoku:20170923100731j:plain

f:id:kougenrantoku:20170923100747j:plain

ここで改めて4人部屋の他の患者について記述してみる。

まずは以前に少々紹介した、私の隣のベッドで頻繁に電話をしているオジサン。

マナーモードにしていない折り畳み式ガラケーで、特に緊急性が無さそうな世間話しを延々と普通の声で話しているので個人情報がダダ漏れ

娘と孫がいるが現在は一人暮らし、バツイチで別れた奥さんは再婚しているようだ。

そんな情報はどうでも良いのだが、気になるのは女性看護師さんへの対応だ。

曜日や、夜勤などでシフトが代わるので総勢10名を超える看護師さんが忙しく働いているのだが、この患者は若い女性看護師が来る度に、キレイだね、可愛いね、とやたらに褒める。

ちなみにこの患者、マナーモードにすると携帯電話が何処に有るかも判らない位、視力が悪い。

まあ、それだけなら良いのだが、続けて必ず電話番号教えてと続けるのだ。

私が聞いただけでも4名に電話番号を聞き(当然教えないが)、1名には強引に自分の電話番号を書いたメモを渡していた。

普通にセクハラ行為だろう。

何となく、離婚していて現在一人暮らしの理由が判る。

翌日退院して行ったが、退院手続きに時間が掛かる事を何度も看護師さんにクレームを付けた挙句、『文句を付けないと何時までも待たされる』、と吐き捨てる様に呟いて退室。

まあ、クレームを付ける事でこの患者の手続きはちょっと早くなったかも知れないが、何度も問い合わせに行かされたスタッフの手間や、クレーマー対策で後回しにされたかも知れない他の患者の迷惑なんかは、全く考えた事も無いのだろう。

病院スタッフの為にも、この患者が再入院しない事を心より祈る。

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170923101055j:plain

f:id:kougenrantoku:20170923101111j:plain

次は私のベッドの窓際の並びの患者を紹介する。

この患者さんはかなり高齢で、目だけで無く歩行も困難。

更に耳が悪いらしく補聴器をしているのだが、これが問題だった。

ラジオを聞いているようだが、補聴器の調子が悪いらしく甲高い金属質なキーンと言うハウリングの様な音がしばしば発生する。

更に胃腸の具合が悪いのか、頻繁に大きな音と共に放屁を繰り返す。

ちなみ各ベッドは上下が開いたカーテン1枚で仕切られているだけなので、防音性は一切皆無。

歩行が困難な為、トイレが近い部屋が空いたので2日で移動して行ったが、携帯電話好きと一緒に居なくなったのでちょっとは気が楽になった。

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170923101305j:plain

f:id:kougenrantoku:20170923101320j:plain

さて、4人部屋の残る一人の患者は、私より長く入院しているらしく、スタッフは全員顔なじみ。

左目は問題無いようで、年齢も私と同年代らしく、眼科病棟の患者としては若いので歩くのもしっかりしているが眼の方は重症のようだ。

ひっきりなしに看護師に痛みを訴え、アメーバが暴れていると繰り返している。

アカントアメーバ角膜炎と言う奴か?

具合が悪いのは仕方がないが、体臭が気になるのか日に何度も男性用消臭スプレーを噴霧するのが気になる。

実は同様の体臭抑制スプレーを私も持ち込んでいたのだが、アメーバー氏の行動を見て自粛した。

病気のおっさんが臭いのは当たり前なのだ。

広告を非表示にする

入院飯4

am6:00起床。

慣れ無いうつ伏せ姿勢で安眠出来ず、数時間ウトウトしては首や顎、腰の痛みで目覚めてストレッチ。

うつ伏せで寝ているだけが、こんなに辛いとは思わなかった。

朝食。

f:id:kougenrantoku:20170923100042j:plain

朝の検診では手術は綺麗に仕上がっているとの事で、今後どれだけ頑張ってうつ伏せ姿勢を取り続けるかが、視力回復のポイントになる。

病院からは、野球のキャッチャーが胸に付ける様な首の部分がU字にえぐれた形状のクッションが支給されていて、これを胸に当てた姿勢でベッドにうつ伏せになるのだが、首や額、頬や喉、唇など寝具に触れる部分が時間経過と共に血行が阻害される為に痺れ始め、やがて痛み出す。

手術直後の右目は浮かして置く必要が有るので額にクッションを当てているのだが、頭の重みで徐々に沈む為に首の水平が保てず、常に首に引っ張りか圧縮の力が加わり痛みが増して来る。

横になっていても辛いので度々椅子に座って下向き姿勢を取るが、今度は違う所が痛くなって来る。

人間の身体は、長時間同じ姿勢を取り続ける事は出来ないのだ。

望月三起也先生の代表作、ワイルド7の緑の墓と言う章にエビフライと名付けられた拷問が出て来る。

f:id:kougenrantoku:20170923100230j:plain

丸太で作られた十字架を背負わされ、腰を伸ばせない様に90度曲げた姿勢で足と首に鎖を繋がれる。

作中では、『人間が同じ姿勢に耐えられるのはせいぜい1時間さ』、『その苦痛は千本からの針で腰をさされているのとおなじだという』、と解説されている。

この拷問をされたニセワイルド7の一人は痛みに耐えきれず、10時間持たずに発狂する。

主人公の飛馬はエビフライに24時間以上耐え抜いた上で反撃、脱出するが、これは不屈の闘志を持つヒーローだからである。

人一倍根性の無い私が、こんな拷問の様なうつ伏せ姿勢に2週間も耐えられるだろうか?

昼食。

f:id:kougenrantoku:20170923100352j:plain

f:id:kougenrantoku:20170923100415j:plain

それにしても1日が長い。

夕食。

f:id:kougenrantoku:20170923100431j:plain

f:id:kougenrantoku:20170923100455j:plain

まだまだ眠れない夜が続く。

広告を非表示にする