入院飯10
相変わらず不自然なうつ伏せ姿勢で寝るのに慣れず、夜中に数回目覚めて身体をストレッチ。
熟睡出来ないまま、明け方ウトウト微睡んていると、何だか音が聞こえる。
薄っすらと目を開けると、周囲が明るい。
夜が明けたのか?
それにしても、この音は何だ?
『静かにして貰えませんか!』
アメーバ氏の声で覚醒した。
独り言のベッドの天井照明が付いている。
時計を見ると、まだ夜明けまで1時間も有る。
引き出しや扉の開閉音、衣類をビニール袋から出し入れする様なガサガサする音。
何でこんな時間に荷物の整理をしているんだ?
アメーバ氏は昨夜は特に具合が悪かったようで、夜中にも痛み止めを処方されていた。
日中の独り言だけでもイライラしていたはずなので、流石に我慢の限界だったのだろう。
しかし、先般の携帯電話や補聴器も同様だが、この様な問題行動を起こす人はそもそも自分の行為が他人に迷惑をかけているという自覚が無い。
従って注意されても何故注意されるのか理解が出来ない。
結局、この患者は注意された後も暫くの間ガサガサを止めなかった。
アメーバ氏が切れるかと思ったが、これ以上言っても無駄だと思ったのだろう。
最後の朝食。
am10:00退院。
2日間の差額ベッド代と手術費込みで費用は約27万円だった。
眼球内のガスが抜けるまでは手首に薄いグリーンのバンドが巻かれる。
万一ガスが残った状態で交通事故などで意識不明のまま他の医療施設に緊急搬送された場合、笑気ガスなど使われると失明の恐れがあるので、その予防策との事。
タクシーで自宅へ戻る。
自宅へ帰っても、更に1週間うつ伏せ姿勢を続けなければならないが、これ以上他の患者に煩わさる事が無いだけでも心が休まる。
最初に医師から入院を告げられた時には久々にゆっくり休めると思ったのだが、とんでも無い入院初体験だった。
ちなみに入院前と比較して体重は3㎏減っていた。